Forblaze Mol ドキュメント
1. 動作環境 (Recommended Environment)
Forblaze Molは最新のウェブ技術である WebGPU を使用して高速な描画を実現しています。快適にご利用いただくために、以下の環境を推奨します。
- 推奨ブラウザ: Google Chrome / Microsoft Edge (最新版)
- 必須機能: WebGPU および WebAssembly (WASM) が有効であること
- ハードウェア: 数万原子規模のモデルを表示する場合、独立したGPU(NVIDIA, AMD等)を搭載したPCを推奨します
※ WebGPUがサポートされていないブラウザや環境では、アプリが正常に起動しない場合があります。最新のアップデートを適用してご利用ください。
2. はじめに:分子動力学可視化の新しい形
近年、材料科学や創薬の分野において、分子動力学(Molecular Dynamics, MD)シミュレーションの重要性は日々高まっています。計算資源の増大に伴い、シミュレーションから得られるデータの解析や可視化もまた、高度な処理能力を要求されるようになりました。
従来の可視化ツールは、高性能なワークステーションへのインストールを前提としたものが多く、出張先や自宅、あるいは学生個人のラップトップ環境では、手軽にデータを扱うことが難しいという課題がありました。
「もっと手軽に、しかしパフォーマンスは妥協せずに、ブラウザだけで解析が完結できないか?」そのようなエンジニアと研究者の問いから、Forblaze Mol(フォルブレイズ・モル)プロジェクトはスタートしました。
なお、ブラウザ内でのローカル処理による安全性を最優先に設計しておりますが、ベータ版サービスであることをご理解の上、解析結果の正確性や、本ツールの利用によって生じた損害等については、利用者ご自身の責任においてご判断・ご活用いただくようお願いいたします。
3. データの安全性について
Forblaze Molはプライバシーとセキュリティを最優先に設計されています。読み込んだシミュレーションファイルはサーバに一切アップロードされません。すべてのデータ処理とレンダリングは、ユーザーのブラウザ(ローカルPC)上で行われます。そのため、外部に漏洩してはならない研究途上のデータであっても、安心して可視化を行うことが可能です。
4. 対応データ形式(LAMMPS, VASP, Gaussian, CP2K等)
Forblaze Molは、複数のファイルを同時に選択して読み込むことができます。アプリが選択されたファイル群から必要な情報を自動的に抽出し、分子構造・ユニットセル、トラジェクトリ(構造の時系列データ)、熱力学量を読み取ります。
- LAMMPS: data, dump, in, log
- Quantum ESPRESSO: out
- VASP: XDATCAR, POSCAR, OUTCAR
- MXDORTO: file07.dat, file09p.dat, file09v.dat, file05.dat
- CP2K: out, xyz
- MOPAC: out
- GAMESS: log
- NWChem: out
- Gaussian: out, log, fchk
- Gromacs: gro, log
- その他共通形式: PDB, XYZ, MOL2, MOL, SDF
5. 主な機能
- 直感的な3D操作: マウス操作によるモデルの自由な回転、拡大・縮小が可能です。
- アニメーション再生: キーボードショートカットを使用して、トラジェクトリの再生・停止を操作できます。
- 熱力学量の解析とグラフ表示: エネルギー、温度、圧力などの時系列データが読み込まれた場合、「Analysis」メニューからグラフを表示できます。トラジェクトリを読み込まず、logファイル単体のみでの解析も可能です。
- トラジェクトリ解析機能: 読み込まれたMD計算結果から動径分布関数(RDF, Radial Distribution Function)と平均二乗変位(MSD, Mean Square Displacement)が計算できます。
- データのCSV出力: 読み込まれた熱力学データなどは、csv形式としてクリップボードにコピー可能です。
- GLBエクスポート機能: 表示しているスナップショットをPowerPoint等に挿入可能な3Dオブジェクトファイル(.glb)としてエクスポートできます。
- 動的結合表示: ReaxFFやNNPMDを用いた反応MDにおいて、化学結合の生成・解離を動的に可視化します。
6. 技術的背景:RustとBevy、そしてWASM
Webブラウザで大規模な計算と描画を行うための核心技術として、私たちはプログラミング言語「Rust」と、Rust製のゲームエンジン「Bevy」、そしてWebAssembly (WASM) を採用しました。
なぜRustなのか?
Rustは、C++に匹敵する実行速度と、メモリ安全性(Memory Safety)を兼ね備えたシステムプログラミング言語です。数万個の原子座標を毎フレーム更新し、描画パイプラインに送るような高負荷な処理において、Rustのゼロコスト抽象化と所有権モデルは、バグの少ない堅牢なコードと極めて高いパフォーマンスを実現します。
WebAssembly (WASM) の可能性
WASMは、ブラウザ上でネイティブコードに近い速度で実行可能なバイナリ命令形式です。Rustで記述されたForblaze MolのコアロジックはWASMにコンパイルされ、JavaScriptのオーバーヘッドを回避して直接ブラウザの仮想マシンで実行されます。これにより、従来のJavaScript製可視化ライブラリでは困難だった、数万原子規模のスムーズなインタラクティブ操作が可能になりました。
7. 基本的な使い方
- ステップ1:アプリの起動
ヘッダーの「App」リンクをクリックし、アプリケーションページへ移動します。 - ステップ2:データのロード
画面上の指定エリアからファイルを選択します。ファイル冒頭をスキャンしてデータ形式や内容を自動的に認識します。 - ステップ3:可視化と操作
3D描画されたモデルをマウスで回転・拡大できます。キーボードショートカットでアニメーションの再生が可能です。
8. お問い合わせ・不具合報告
Forblaze Molは現在ベータバージョンとして提供されています。ご利用中に不具合を発見された場合や、機能に関するご要望がございましたら、専用のGoogleフォームよりお知らせください。